Xジェンダーって、ほかのセクシュアルマイノリティとどう違った悩みを抱えてるの? と思うかもしれません。
最初っから身も蓋もないことをいってしまうと、本当に人それぞれです。
Xジェンダーと言葉では一括りにしていますが、無性・中性・両性・不定性といった4つの、自分の性の捉え方をしている方々がいるわけです。
さらにどういうスタンスで、無性・中性・両性・不定性を自認しているか、も人によって違ってきます。
たとえば私は、自分が男性的に見られることを受け入れたうえで、無性を自認しています。
ならほかの無性を自認している人も同じかというと、きっとそうではありません。手術をするなど、自身の見た目から性別を感じさせないよう徹底している方もいるのです。
それはきっと、中性・両性・不定性を自認している人でも同じだと推測できます。
と、ここまで1つの悩みについて話してきたわけですが、少なくとも同じXジェンダーでも、単純計算すると2^4=16通りの悩みや考え方があるとわかりますよね。(例に挙げた捉え方以外もあるならば、n^4通りあるといえます)
じゃあほかの悩みも掛け合わせていくと・・・?
このようにXジェンダーの悩みは、Xジェンダーを自認する人の分だけあり、特有の悩みというのはあるようでないものなのです。
長々とここまで前置きをした理由は、要するに私の答えられる悩みは『私が悩んだこと』だけということ。
これから書く内容は私の意見であって、Xジェンダーの方のなかでも賛否両論であってしかるべき、というわけです。 いちXジェンダーの悩みに過ぎませんが、参考にしていただければと思います。
目次
Xジェンダー特有の悩み
Xジェンダー特有の悩みというのは、あるようであんまりありません。
というのも、トランスジェンダー的な悩みと、同性愛者・両性愛者の悩みを複合したものになるからです。
そのなかでもXジェンダー特有? と思える悩みをここでは紹介します。
Xジェンダーがなんなのかをわかってもらいにくい
Xジェンダーを人に説明するとき、『LGBTとどう違うの?』『性別がないってどういうこと?』という会話から始まることが多くあります。
そもそもXジェンダーという言葉自体が社会に浸透していないので、言葉の説明からしなければいけません。
セクシュアルマイノリティ=LGBT、とふんわりしたイメージを持っている方へ説明しようとすると、どうしても『Xジェンダーが他とどう違うか?』にも触れざるをえません。
なので説明が長くなってしまいがちで。聞いてもらえていることをありがたいと思うのと同時に、申し訳なさも、私は感じてしまったりします。
勘違いでは? といわれやすい
自分に性別がない、あやふやなときがたくさんある。
そう説明すると「いや勘違いじゃない?」「そんなことはないはずだ」といわれたりします。
多分上記のことをばっさり言えてしまう人は、自分になさすぎる感覚であり、そもそも発想したことがない価値観であるがゆえに、そう口をついてしまうのではないかと。
それはある意味普通のことで、ある程度仕方のないことです。
そこで「そういう価値観もあるんだ」→「その価値観を知ったうえで、やっぱり勘違いじゃない?」と受け入れてくれるスタンスの方だと、説明のしようもありますし、会話の落としどころもつけられます。
ですが「そんな価値観はありえない」→「きっと恋愛経験が乏しいんだ、S〇Xすれば勘違いだと気付く。S〇Xはいいぞ(以降、若気の至り等の武勇伝語り風自慢・・・)」と、自分の考えに絶対の自信を持つ方もおられるのです。
S〇Xとまではいかないけど「こうしたら勘違いだと気付くからやってみなよ!」と、なかば親切心にも近い接し方でもあるがために。
「いや、勘違いじゃない」「どうしてわかってくれないの?」とでも言おうものなら、「なんだよこっちはせっかく教えてやったのに」と対立を深めるきっかけにもなりかねません。 見方を変えれば、こういった方々はとっても優しい人でもあるがために、こんなことで決裂してしまうのはもったいない。
正直、
・Xジェンダーとか勘違いじゃないの?
・性別がないとかありえないっしょ
・きっとそう思う原因があって、それを解決すればいい
これらの話、超共感できます。笑
自分自身、そう思い続けて十数年生きてきています。
なので言われるのと同時に「そりゃそうだよね」と思ってもしまうのです。
それでも。あらゆる可能性を潰してまでも、やっぱり自分の性別でしっくりくる考えが、無性別だった。だから、もうあきらめてXジェンダーを名乗ろうじゃないかと。
こういうの、退職の話と似ているなと思っていて。学生さんは退部のときとかを思い出してもらえればわかりやすいかなと。
「辞めます」
そのひと言の重みを、当事者以外の人間はしばしば誤解しがちです。
辞めたいといった人と深く付き合っていたなら、まぁしょうがないとなるかもしれません。
でもよく知らない人だったら、だいだい「突然どうしたの?」と思ってしまうのではないでしょうか。
当事者からしてみれば、昨日の夜に「あ、明日辞めちゃおう☆」と思いついたわけじゃなくって、数ヶ月、場合によっては数年も辞めることを考え続けた結果なわけです。
だから「突然どうしたの?」なんて言われようものなら、「ふざけんな」と思うか「まぁ隠してたからそうでしょうね」と。
それとXジェンダーも同じ。
数年、十数年も自分自身の違和感と対峙しつづけて、それでもXジェンダーなんだと思ったのです。
そんな背景があるから、そりゃこちらも簡単には意思を曲げないですし、頑固にもなります。
「わかってないのはお前のほうだ」論争が始まってしまうのも、無理はありません。
「あぁ、性別がないって価値観もあるんだね」
0か1かの思考をすぐに始めるのではなく、とりあえずそういう価値観がこの世には存在するんだと受け止めてくれたらありがたいなと思うのです。
もちろん、受け止めたうえで「Xジェンダーが勘違いかどうか」の判断をするのは、相手次第ですが。
もし私の目の前に、Xジェンダーかどうかで悩む人がいたら、とりあえずXジェンダーを自認してみたら? といいます。
理由はこちらにまとめているのでぜひ。Xジェンダーかどうか悩んで時間を使うくらいなら、別のことに時間を使うのがおすすめだよーという主旨です。
同じ悩みをもつ人と出会いにくい
ほかの性にも言えることですが、同じ悩みをもつ人と出会いにくい。
特にXジェンダーは。
今でこそTwitterを見れば、自分と似た人がいることが可視化されているうえ、会おうと思えば会える時代なのですし、マッチングアプリもたくさんありますが。
昔はそんなことはなかったわけです。
そんな時代、セクシュアルマイノリティ=ゲイ、レズ・・・? みたいな世間のなか、「そのセクシュアルマイノリティにもしっくりこない、自分って本当に何者なんだろう」と悩んだ時期は長くありました。
Xジェンダーを知ってからは、自分の持っているこの感覚は普通の感覚だったんだとわかってかなり救われましたね。
どの一人称もしっくりこない
どの一人称も使いたくなくて、会話に困っていた時期がありました。
なぜかというと、一人称を使うこと=自分の性別を表現すること、といった感覚があって嫌だったのです。
一人称の言葉の多くは、話す人の性別を色濃く表します。
男・・・僕、俺
女・・・私、あたし、うち
など。だからこそ、男でも女でもない自分にとっては、どの一人称もしっくりこなくて使いたくありませんでした。
ですが、一人称を使わないのは会話をするうえで面倒だったし、かえって一人称を使わないことで悪目立ちしてることにも気付いたので、やむなく一人称を使うことにしました。笑
いま人と会話するとしたら、一人称で『私』を使うことが多いです。
社会人になり『私』という一人称の、高い汎用性を思い知ったので、特に何も考えずに『私』を使っています。
Xジェンダー以外にも共通するかもしれない悩み
こちらは悩みのなかでも、Xジェンダー以外のセクシュアルマイノリティの方々にも通ずることかなと。
服装どうしよう問題
服装は人間の一番外側の皮膚、という言葉もある通り、服はジェンダーを反映させるものが多くあります。
学ラン=男、スカート=女みたいな。
その得も言われぬ気持ち悪さを、言語化してみた記事がこちらです。
・・・というのは昔の話。
いまは服装や見た目をうまく使うことの生きやすさを、面白がって過ごしています。
いわば自己プロデュース的な感覚です。
カミングアウトするか問題
カミングアウトしたら楽になれるけど、でもリスクも大きい。
そんなダブルバインドを抱える当事者は多いはずです。
ただ悶々と終わりのない考えを巡らせてもしょうがないので、リスク&リターンの観点からカミングアウトを考えてみてはどうでしょうか。という提案があります。
こうなったらカミングアウトしよう、そうじゃないならしない。と迷うことがなくなるので、カミングアウトのことで余計な妄想を膨らませる必要もなくなるのではと。
生まれつきなのか問題
「生まれつきからLGBTなの?」という、ツッコミどころ満載の質問をもらうこともあります。
生まれつきだったのかどうかは、自分では全然わかりません。鶏が先か卵が先か、ってレベルで謎です。
なのにわからない、と答えると不服な反応をされることがしばしばあります。
「いや、自分のことなのにわかんないの?」と。
『自分のことなのに自分が一番、自分のことがわからない』
それがXジェンダーを自認するきっかけにも繋がっているので、こちらとしては「なぜそんなに白黒以外の答えはない、と決めつけるの?」とも思ってしまいます。
これらの悩みはあくまでも一個人の一例
悩みを通してみて見えてきたものはありましたか?
もし自分に引き付けられることがあって、Xジェンダーを少しでも身近なものにしてもらえたなら幸いです。