孤独から救ってくれた人と宅浪中に出会えた話

孤独から救ってくれた人と宅浪中に出会えた話 宅浪体験記




 

宅浪は孤独で結果が出ない限り、普段の努力を誰からも褒めてはもらえません。

「毎日8:00~22:00まで頑張って勉強してたから大丈夫」なんて不安を吹き消してくれる人もいないのです。

 

けれど。意外なところに頑張りをみてくれる人はいるかもしれません。

家族よりも自分のことを見てくれている人が。

 

そんな人と出会えた、ある宅浪生の話です。

 

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行きつけのパン屋での出会い

 

ずっと行きつけのパン屋さんがありました。

レンタル自習室のすぐ近くにあって、宅浪がはじまった4月から利用していた場所です。

 

パン屋さんはいつ行ってもイートインスペースがガラガラ。

商業ビルの地下で立地的には悪くないのに。

でも照明も心地よく、雑音もそこそこ、パンもおいしい。これは穴場だ。

いつの日か自習室へ行くときの昼食は、ほとんどパン屋で済ませていました。

 

パンを食べながらする勉強は30分から、多いときは2時間ぐらい。

雨の日も風の日も飽きることなくパンを食べ続けて勉強しました。

 

自分との約束を守るために勉強する。

そんな毎日は季節感も忘れさせます。

 

簡単な勉強のノルマさえ達成できず自己嫌悪しても。

時期的に解けないとまずい問題が解けなくても。

いつだって戦うのは自分1人だったし、パンは涙や焦りを胃に溶かしてくれました。

 

気付くとセンター試験1週間前。

国立大学を狙っていたのでセンターもかなりの緊張感で臨んでいました。

 

パン屋でも河合塾のクソでかいセンターの過去問とにらめっこしていたとき、視界に飲み物が差し出されていました。

黒くて、しゅわしゅわしたジュース。

手の伸びる方向をみると店員さんの姿が。

 

 

 

 

 

「ずっとここで頑張って勉強してたよね。これ、おばちゃんからのサービス。応援することしかできないけれどセンター試験頑張って。あと、このことはお店の人に内緒だよ。」

 

 

 

 

4月から1月まで通っていたので100回以上は来店していたかもしれません。

ずっと見守られていたんだ。

1人だと思っていたようで、1人じゃなかったのか。

・・・そうか。いままで頑張ってきたんだよな。

 

これまでに積み上げた勉強が、時間が、一気に頭をめぐってこみあげるものがありました。

一番欲しかった言葉。「頑張ってる」って、ただそれだけなのに。

 

 

 

 

 

 

「エ・・・ァ、ありがとうごザイマス・・・頑張ります、ありがとうございマス・・・」

 

 

 

 

10ヶ月におよぶ宅浪生活は、コミュニケーション能力を下げるにも十分すぎました。

 

結局センター試験は過去最高点がとれ、A判定をもらえる出来に終わりました。

 

後日談

 

センター試験が終わって国立大学の出願資料をそろえるのに数日。

事務処理に一息ついたところで、あらためて店員のおばちゃんにお礼をいおうと思いました。

 

今度はちゃんと、自分の言葉で。

おばちゃんの勇気に、自分も勇気をもって返したい。

あのコーラのおかげで力が湧いて、納得のいくセンター試験にできたって。

 

通いなれた階段を下りてみるとお店は白いついたてで囲まれていました。

センター試験関連で行けなかった1週間で閉店し、今度新しいパン屋が入るとのこと。

 

 

新しいパン屋には、感謝を伝えたい人はいませんでした。

 

真っ白い明るい照明、入れ替わった客層と店員、こぎれいなパン。

 

いまさら、あのパン屋は戻ってこないと気付きました。

本当にいまさら。

 

きっと店員のおばちゃんが声を掛けられたのも、もうじきパン屋が閉店すると知っていたから。

もう関係が切れるとわかっていたから、できた行動でもあったのだと。

 

打算的な考えが混じっていたとしても、それでも伝えたい言葉があったのに。

 

いまだに氷でうすまったコーラを飲んで思い出すのは、センター前のあの日のことです。

 

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きっと誰かが見ていてくれる

 

受験勉強は誰のためでもなく、自分のためにやるものです。

褒められるものでもなければ、むしろやって当然。

 

でも大丈夫。誰かがきっと見ています。

それは家族かもしれません。

想像もつかない見ず知らずの人かもしれません。

 

もう十分頑張っているのだから、あとはそれを続けるだけです。

 

私ももう応援することしかできない立場になりました。

不安や悩みぐらいなら聞けるかもしれません。

もう誰にも頼れない。挫けてしまうと思ったら、コメント欄でも、TwitterのDMからでも頼ってください。

 

つらくなったとき、お待ちしています。

 

 

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