セーラームーンは理性と感情がテーマ?45話が忘れられないので思ったことを書く




 

いままでセーラームーンをたいして知らずに生きてきました。

4月から始まった再放送。

何気なく見てみたら、気付けばどっぷりハマっていました。

 

特に主人公のうさぎの感情を通して描かれる、『人間の素直な気持ち』が大好きで。

戦士として、プリンセスとしての使命を割りきれなかったり。

どんなにピンチでもタキシード仮面への気持ちに揺れたり。

 

随所にちりばめられた人間臭い心理に共感し、うさぎの人間性とともに作品も好きになっていきました。

私自身、気持ちを抑圧して学生生活を過ごしてきたので、感情に素直なうさぎに対して、とりわけ慈しむ気持ちが湧いたのかもしれません。

なのでセーラームーンという作品に対して、私は理性と感情がテーマだと勝手に解釈しています。

 

一番象徴的だったのがタイトルにある、セーラームーン45話だと思っています。

地球とプリンセスを守るために、躊躇なく戦って散った4人の戦士。

顔も知らぬ誰かよりも、目の前の特別なあなたを失いたくないからと、戦いを放棄しようとするうさぎ。

 

そして4人の死を受け入れる間もなく、あくまでも感情にしたがって悪を倒そうと決意したセーラームーン。

・・・あぁ、この子は大人になってしまったのだ。

どうしてこんなにも頼もしくて哀しいのか。

 

頭をずっとぐるぐるしているので、この気持ちを落ち着けるためにも、セーラームーンを見てて覚えた感情の掘り下げをしていこうと思います。

 

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大人になること=自分をコントロールできること

 

4人の戦士が死んだあと、うさぎはうずくまって泣きはらします。

そこへ亡き戦士たちの幻影がささやきます。

 

「ほら、元気を出して」

「うさぎちゃん、しっかりして」

「希望を捨てないでね」

「うさぎ、立って。 いつまでも私たちは一緒よ。」

 

そう、私は1人じゃない。

言い聞かせるようにして、彼女は走り出すのです。

 

 

大人になることは、感情を理性で押さえつけることとイコールではないと思っています。

むしろ感情によりそって、現実とうまく折りあいをつけられる大人の在り方もあるのではないでしょうか。

このときのうさぎは、まぎれもなく後者です。

 

身も蓋もないことをいってしまえば、うさぎは1人ですよね。

だって4人のセーラー戦士は死んじゃってますから。

 

でも身は滅びようと、心では繋がっている。

だから大丈夫なのだ、と。

非合理的なことでも、うさぎにとっては実感をもって、確かに信じられることだった。

 

前世で死ぬまでの記憶を失って転生してもなお、エンディニオンやセーラー戦士と巡り会えたからこそ、うさぎには納得のいく考え方だったのでしょうね。

きっと4人がいなくなったから自分がやるしかない、なんとしても使命を全うするんだ、なんて理性的な発想だったら、うさぎは立ちあがれなかったと思います。

 

理屈では沈められなかった感情を、「心では1人じゃない」という感情で制したわけです。

大人になってしまったんだなぁ。 頼もしいのがこんなに哀しいなんて。

復讐を理由に戦うわけじゃないところも、本当にやさしいお話です。

 

 

そう思うとマーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナスは極めて理性的だったんだなと。

戦士としての記憶が戻る前からも使命に忠実でしたし。

使命なら仕方がない、使命だからやるんだ。 なんて、ある意味では素直すぎますかね。

 

特にヴィーナスは恋敵に対して、「あの人が愛した人だから救いたい」とうさぎに頼みこむほどです。

自分本位な気持ちが誰を傷つけ、自分もどう傷つくのか。

好きだからこそ一番幸せになってもらいたい。

若干14歳にしては達観しすぎた恋愛観、本当に愛の戦士だと思います。

 

 

話を戻します。

うさぎもうさぎで素直すぎて、見ているこっちがヒリヒリしてきます。

普通の女の子として暮らしたい、使命なんか知らない・・・。

 

自分の背負った運命の重さ。

本当の自分はプリンセスとしての自分なのか、いままでの自分なのか。

じゃあ家族は? 友達は? これまでの思い出のすべては?

全部全部嘘でした、って否定されたように感じてもおかしくはないはずです。

 

 

こう考えると4人のセーラー戦士が、金太郎あめ的な社会人のようにも見えますね。

そうじゃなくって。

理屈で割り切れないことばっかりの世の中だからこそ、感情の割り切り方もいろいろあるし、同じように物事の正しさも違ってくるはずで。

 

どんな生き方があってもいいんだよ、なんてメッセージを受け取ったように感じます。

 

 

・・・と、ここまで想像が膨らんだのは、45話にいたるまでの人間関係の積み重ねが一番でしょう。

 

テストでは底辺争いをするほど親近感がありつつ、懐の深いお姉さんのようなまこと。

セーラー戦士として一番付き合いが長く、特に初期は持ち前の頭脳で何度もうさぎを救った亜美。

「もしセーラーヴィーナスちゃんだったら」と憧れ続け、先輩戦士としても人間としても、一緒になってふざけあえるぐらい強くしなやかだった美奈子。

いつも喧嘩ばかりだったけど、お互いに信頼しあっていたレイ。

 

彼女らが最後にかけた、うさぎへの一言が本当に重たくって。

「セーラームーン、喧嘩ばかりしてたけど楽しかったわ」

対立することが多かった分、レイちゃんとの掛け合いは心にきますね。

「あなたは最後の戦いが残ってるんだから、パワーを蓄えとかないとね」

そういった後の沈黙がリアルすぎるし、レイちゃんがおちゃらけて空気を和ませたときのうさぎの反応は、リアルよりもリアルしてませんか。

 

あとは声優陣の迫真の断末魔。

美奈子は彼女自身の感情が乗り移ってくるようで、本当に怖さが伝わってきます。

映像も亜美は身体を焼かれる様子が、見てるだけで苦しい。

当時の子どもがショックを受けるのも無理はありません。

 

 

多分、セーラームーンを好きになれたのは今だったからだろうな、って思います。

思春期の自分だったら、うさぎがじれったすぎて受け付けなかったかも。

 

どうか1秒でも素直で、純粋でいてほしいな。

アニメの世界なのにそう思っちゃうなんて変ですね。

きっと子どもができたら、同じように感じるんだろうなぁ。